團伊玖磨 食‐パイプのけむり選集 小学館文庫 團伊玖磨全仕事
    パイプのけむり  團伊玖磨・全仕事   團伊玖磨全仕事  團著作目次
書   名 価  格 著  者 発行所 頁  数 寸  法
食・パイプのけむり選集
初版:2009.05.13 978-4-09-408390-3
562円 團 伊玖磨 小学館 313 150×105×15
 團伊玖磨対談集「毒蛇は急がない」~檀一雄「荒地のブドーはうまい」 檀ふみ:「父の縁側、私の書斎」(新潮社)
   

 
近鉄の生駒駅で,普段は、売店で本などを手にすることはないのだが、今、東京で話題になっている阿修羅の写真が巻頭を飾っていたのでつい「サライ2009年6月4日号」のページをぱらぱらと捲ったら、久しぶりに先生のことが記事になっていた。
 何故か、うれしくなって早速「この本下さい」と財布から500円玉を取り出し、わくわくしながら本を抱えて部屋に戻った。
 私などは先生とご一緒した時間は短いが「パイプのけむり」は私の愛読書だったから先生の書かれたものについては、長い付き合いになる。
 始めて團先生にお会いしたとき積年の恨みを晴らすように、書いたご本人に遠慮会釈なくいろいろな質問をさせていただいた。
 特に全世界を旅されたことと食に関しては、稀有壮大、摩訶不思議、何処までが真実で何処までが虚偽なのか区別がつかない、全く驚天動地のお話ばかりだからだ。
 檀ふみさんが「ただ、恐れ入りました」とひれ伏すばかりであると帯に書いておられるように、食に関しては生半可ではないのである。
 もちろん、ふみさんの父上だって「檀流クッキング」なる著書を出されているくらいだから並大抵の方では無いはずだとかねがね思っていたから、そのお嬢さんが「ただただ、恐れ入りました」とおっしゃるのは、團先生の食には誰もが説得されてしまうのは当然である。でも、この文庫本には、いくつかの團先生の食に対する執念を表現した重要な文章が欠け落ちている。
 琵琶湖の鴨の話や、鴨と言えば仲代達也さんの狩猟の話や駒形どぜうのご先祖のことやスマックアイスクリーム、沖縄のイラブー料理の数々、ヴァイキング、世界の酒のことなどなどがである、余りにも一般的であるように思う。
 この頃は、食べることばかりの過食の時代だから「食」について出版すれば本は売れるに違いないという世情を考慮して選んだことが担当者の底辺心理としてあったのだろうし、選者の時代が我々世代と違うと言えばそれまでだが、どうも 現代人の「食」の知識で理解出来る文章だけをセレクトしたように思われる。さらに、根底に先生の志向した「食」と「人」の関わりが非常に重要なことなのに欠如しているように思えてならない。
「パイプのけむり」27巻に書かれている「食」に関する言葉、嗜好品も含め約3500語ある(たばこ等を含む)他の地名や人名に比較すれば少ないが私の20項目の分類からすれば「食」は多いほうに属している。
 これを機会に「食」に関する辞書についても「團伊玖磨全仕事」のHPに公開することにしようと思う。
 もちろん、先生の本が上梓されることは誠に喜ばしい「地の果ての料理店」が掲載されていたので快哉を叫んだでしまった。私の最も好きな文章の一つである。
 その著述の雄大さである。中国人の商売に対する姿勢である。執念である。職業・仕事に対するサービス精神、料理に対する先生の食べることが凝縮されているように思う代表的な一文である。
 人のいない所に店を出し、きちんと品揃えをして客を待つ。日本人なら先ず、人の来ないような所に店など出さない。
 そして、人が来ても売れなければ理由を問わず地域の人の迷惑も顧みず店を畳んでしまう。先生ならこうおっしゃるだろう。
「どうだ、すべての歴史の原点は中国にあり,,中国人は、自分の世代だけではなく,未来を見つめてるだろう. もう少し日本人は、中国の人々を見習ったらどうだ」と言わんばかりなのである。
「家内の料理することことという音が小さく響いて来ている事が回想の引き金になったのかも知れない」が、この話のイントロ部分で読み人は、ついつい先生の口車に乗せられてしまうのである。
いろいろな国の音楽を極めるために旅に出たと先生の話は佳境に入ってくる。 そして、世界各国で食べた中国料理の話になる。
 コモド島に蜥蜴を見に行く途中のスンパワ島で、只、一軒ある中国人の経営する雑貨屋があり、そこで中国料理のフルコースが食べられると言う話である。
 そしてその商魂のたくましさは、日本人なんか比べ物にならないと結んでおられる
 私は、食通ぶって実際に経験したこともないことを書く食通が、世間にはごまんといるが、先生の食に関する貪欲さは世界の果てまででも行って、実際に見て触って食べて書くのだから実にリアルで深い意味を持つ、要するに文学者だけではなく、科学者の目も持ち合わせておられる。
 ここにセレクトされた文章は、「パイプのけむり」の一部分であるが、どの文章にもちりばめられている食の知識は際限がない。
 さらに日本の食に関しては、同時代に生きた人間でないとわからないことも現実にある。
  この本の文章の収集をどの時代の人がしたのかは分からないが、多分、タイトルだけを見て若い人がやったように思う。
 何しろ、行ったお国の食生活を地元住民とともになさるのだから、私だったら到底見ただけで震え上がるようなものまで平気で召し上がったのだから驚きを通り越してしまう。
 しかし、私の知る限り先生の日常の食生活は、肉や鰻やビーフシチューや中国料理の数々や脂肪含有量の多いものがお好みのようだった。
 いつも、演奏会の前のひと時、食べ物の話をしながら焼き肉や鰻やをご相伴にあずかった。
 この本を見つけ読み進む内に先生と時間を共有した、その過去の時間を引き戻したいと言う強い想いに囚われたのである。(早崎日出太)


 何日か後に小学館の編集担当に以上の意見を述べた手紙を出したところ、斉藤さんと言う方からお電話をいただいた。
 「パイプのけむり」全巻を読んで文書を選択したこと、時代の変遷に伴い文章を書いた時点では問題の無かった言葉、地名などが変わってしまったかあるいは、タブーになっている言葉が含まれているなどの制約がありそのような文章は、省いたと言う。私見を述べさせてもらえば、やはり原文を掲載、訂正文を挿入すればいいのではないだろうか。
 もちろん、禁止用語などは、その時代でも使用されている事は無いだろうから。
 選集だから基本的に出版社の自由だとしても、「食」とうたったからには、團伊玖磨氏の「食に対する執念の部分は組み込んでもらいたいものである。(早崎日出太)

No 項目名 パイプのけむりにある巻数と頁数 タイトル アサヒグラフ掲載日
項目NO
01 河豚 9 2 11 54
02 薬研堀 16 2 17 87
03 22 3 3 16 続々
04 螺汁 27 3 13 74 続々
05 金平糖 33 3 29 116 続々
06 草野粥 38 4 12 100
07 韃靼風生肉 42 5 32 239 又々
08 北京拷鴨子 50 7 29 204 まだまだ
09 搾菜 66 7 33 237 まだまだ
10 アヴォガド 71 7 40 282 まだまだ
11 陳皮梅 81 8 17 111 も一つ
12 90 8 24 148 も一つ
13 浅蜊 98 9 25 152 なお
14 マカロニ 104 10 2 9 なおなお
15 外郎 112 10 9 46 なおなお
16 ローストビーフ 120 10 42 263 なおなお
17 卓袱料理 125 11 47 309 重ねて
18 大根卸し 130 11 42 275 重ねて
19 ビーヴァー・スープ 135 12 38 257 重ね重ね
20 芥子蓮根 141 12 45 299 重ね重ね
21 かにたま 146 13 6 44 なおかつ
22 結解料理 150 13 15 94 なおかつ
23 とんぶり 158 13 35 215 なおかつ
24 女王と魔王と大王 167 14 25 164 またして
25 179 15 15 90 さて
26 天津麺 184 15 31 198 さて
27 Stewed Beef 193 16 13 60 さてさて
28 Stewed Beefその後 198 16 15 70 さてさて
29 Smörgåsbord 203 16 38 202 さてさて
30 唐辛子
【タイトルが変更されている、間違いか故意か】
209 18 33 198 さてさて よもすがらには【ブリック・キーヌー】と標記
31 トルコ・コーヒー 214 19 17 96 明けても
32 220 20 13 89 暮れても
33 羊頭狗肉 226 21 28 146 晴れても
34 龍田揚げ 230 22 4 32 降っても
35 豆板醤 234 22 22 127 降っても
36 月餅 238 23 3 15 さわやか
37 紅茶  紅茶 243 23 22 106 さわやか
38 食い合わせ 247 23 25 123 さわやか
39 地の涯の料理店 252 23 39 184 さわやか
40 味噌汁 256 23 40 188 さわやか
41 大和煮 260 23 55 259 さわやか
42 落合羊羹 265 23 62 297 さわやか
43 重箱 270 24 36 169 じわじわ
44 パンとコーヒー 274 25 29 128 どっこい
45 昼御飯 279 25 45 205 どっこい
46 七種粥 288 26 9 46 しっとり
47 蟹漬け 293 26 35 174 しっとり
48 栗善哉 298 26 44 224 しっとり
49 海軍カレー 303 27 44 228 さようなら